『TSUNAMI』がリスナーの心を捉えて離さない最大の要因は、桑田佳祐の卓越した言語感覚によって構築されたTSUNAMIの歌詞の意味と切ない世界観にあります。曲の冒頭から展開される「風に戸惑う弱気な僕」や「通りすがるあの日の幻影(かげ)」というフレーズは、過去の恋に囚われ、前に進めない男の繊細な心理描写から始まります。
多くの音楽評論家がTSUNAMIの歌詞考察で指摘するのが、サビで登場する「見つめ合うと 素直にお喋り出来ない / 津波のような侘しさに I know.. 怯えてる」という一節の比喩表現です。ここでの「津波」とは、制御不可能な感情のうねり、すなわち相手を想うあまりに押し寄せてくる巨大な寂寥感や不安を象徴しています。恋に落ちた人間が無力化していく様を、自然界の抗えない力に例えた純文学的なアプローチといえます。
当時の制作背景を探ると、興味深い桑田佳祐のTSUNAMI作詞秘話が浮かび上がります。1990年代後半までのサザンは、英語と日本語を融合させたリズミカルな語感を前面に押し出す作風で一時代を築いていました。しかし、2000年代の幕開けに際し、桑田佳祐は「誰もが口ずさめる日本語の美しさと普遍的なメロディ」への回帰を強く意識したと語っています。日本語特有の哀愁を帯びた言葉選びと、ふりがなを追うだけでも情景が鮮明に浮かぶ韻律構造が、世代を超えた共感を呼ぶ土台となりました。