「愛犬が可哀想だから」という理由で、獣医師の指示を待たずに装着期間を早めてカラーを外してしまうケースが後を絶ちません。しかし、この自己判断は取り返しのつかない重篤な事態を招く危険を孕んでいます。
一般的に、避妊・去勢手術に伴うカラーの装着期間は手術後から抜糸(または傷口の完全癒合確認)までの「約7日〜10日間」です。手術から3〜4日経過すると、皮膚の創傷治癒プロセスにおいて「かゆみ(創傷治癒過程の炎症性サイトカインによる刺激)」のピークが訪れます。人間が我慢できる程度のかゆみであっても、犬は猛烈な勢いで噛みちぎろうとします。
飼い主が「傷口が綺麗に見えるから」と術後5日目あたりで外した結果、ほんの数分間の目を離した隙に縫合糸を引き抜いてしまい、腹壁が裂けて内臓が脱出する重度創傷離開(そうしょうりかい)を起こして緊急再手術に至る事例は、臨床現場で毎年数多く報告されています。再手術となれば麻酔リスクが再度発生するだけでなく、カラー装着期間も当初の倍以上に伸びてしまいます。
また、話題の術後服を過信するのも危険です。生地の上から執拗に舐め続けることで、服が唾液で湿潤し、傷口が細菌感染を起こして化膿するケースがあります。術後服を採用する場合でも、1日2回は服をめくって傷口の赤みや浸出液の有無を肉眼で確認し、舐め癖がひどい個体には速やかにカラーへ切り替える柔軟性が求められます。