公式を導出した直後に、絶対に無視できない極めて危険なトラップが存在します。それが等比数列の和 r=1の場合の処理です。多くの受験生が記述試験で減点される典型例として、問題文に「等比数列」とだけ書かれているにもかかわらず、無条件に分母に $(1 - r)$ を置いてしまうミスが挙げられます。
仮に公比が $r = 1$ だった場合、公式の分母は $1 - 1 = 0$ となり、数学における重大な禁忌である「ゼロ除算(0で割ること)」を引き起こします。現代の採点基準では、この場合分けを怠った答案は容赦なく0点、あるいは大幅な減点対象となります。では、$r = 1$ のときの正しい和はどうなるのでしょうか。
公比が 1 ということは、初項が $a$ であれば、第2項も $a \times 1 = a$、第3項も $a$ であり、すべての項が変化せず $a$ のまま並び続けることを意味します。つまり、初項から第 $n$ 項までの和は「$a$ を $n$ 回足す」という極めて素朴な計算に帰着します。
$$S_n = \underbrace{a + a + a + \dots + a}_{n\text{個}} = na$$
文字定数を含む問題では、必ず「$r \neq 1$ のとき」と「$r = 1$ のとき」で答案を二段構えに分岐させなければなりません。この境界線の意識こそが、数学的な論理性を測る格好の試金石となっているのです。