「部屋の隅に小さな虫がいたけれど、これってムカデの赤ちゃん?」という相談が衛生相談窓口や害虫駆除業者に後を絶ちません。肉眼でパッと見た際の視覚的特徴から、該当する生物の正体をプロファイリングしていきます。
1. 「茶色で小さい(1〜2cm程度)」かつ素早い虫:イシムカデ、またはオオムカデの幼虫
屋内で見つかる「茶色で小さい」多足類の場合、成虫になっても2cm前後にしかならないイシムカデである可能性が極めて濃厚です。イシムカデは土壌性昆虫で、ベランダのプランターや庭の敷石の下を好みます。しかし、ここで警戒しなければならないのがトビズムカデなどの幼虫です。幼虫であっても体長2〜3cmの時点で成虫と同じ毒器官(顎肢)を備えており、触れれば激しい痛みを伴う咬傷被害を引き起こします。頭部が鮮やかな赤橙色で、胴体が暗褐色、触覚が明らかに長く前方を激しく探る動きを見せている場合は、幼虫であっても素手で触れてはなりません。
2. 「黒くて細長い」「刺激すると丸まる」虫:ヤケヤスデ
梅雨時や秋雨の季節、玄関のたたきや洗面所に現れる「黒くて細長い」虫。触れるとゼンマイのように体を丸める特徴があれば、それは100%ヤスデです。日本全国の住宅地に生息するヤケヤスデは、刺激を感じると頭部を中心に平べったい円形、あるいは螺旋状にくるくると丸まる習性(円盤防御姿勢)を持っています。ムカデは刺激を受けると体を反転させて攻撃態勢に入り、決して丸まることはありません。「丸まる種類の虫は絶対に噛まない」と記憶しておくだけで、精神的な恐怖感は大幅に低減されます。
3. 「足が異常に長くて毛むくじゃらに見える」虫:ゲジ(ゲジゲジ)
脱衣所や風呂場の壁面に突如として現れ、住人を戦慄させるのがゲジゲジです。ムカデの仲間(唇脚綱)ではあるものの、系統的には初期に分岐したグループであり、毒針を持つ顎肢の力が極めて弱いため、人間の皮膚を噛み破ることは物理的にほぼ不可能です。ゲジゲジが家の中を徘徊しているという事実は、「屋内に餌となるチャバネゴキブリやダニ、トコジラミが繁殖している」というシグナルでもあります。