1960年代後半、高度経済成長の影で都市の過密と異化が進む東京。整然とした劇場空間を拒絶し、暗闇や路地裏へと飛び出した若者たちがいた。アングラ演劇の誕生である。彼らにとって舞台とは観賞する対象ではなく、世界そのものを書き換えるための実験室だった。
寺山修司が目指したのは、虚構と現実の境界を曖昧にする「劇的なるものの奪還」だった。従来の演劇が提示する物語の辻褄を破破砕し、観客を共犯者へと引きずり込む。観客はただ座って観ることを許されず、暗闇のなかで自身の存在理由を突きつけられた。この過激なアプローチこそが、昭和の熱狂が生んだ前衛芸術の核であり、真実の姿なのだ。