インターネット上では「カルロス・ゴーンはレバノンの歴史ある大貴族の末裔である」「生まれながらの特権階級だった」という言説が散見されますが、これは事実と異なります。
実際の家系は、19世紀末から20世紀初頭にかけて貧困から脱するために南米へと新天地を求めた、典型的な「レバノン移民(ディアスポラ)」の血筋です。祖父ビシャラがアマゾン奥地で苦闘を重ねて築いた商才と、生き残るための適応力こそがゴーン家の根底にあります。
現地ベイルートのキリスト教マロン派コミュニティにおいて、ゴーン家は名門校に通わせる財力を持っていたものの、政治的な名家や伝統的貴族ではありませんでした。むしろ「アウトサイダー」としての劣等感と野心、どこの国にも完全には同化しないドライな合理主義こそが、ゴーンの冷徹なコストカットや組織再編の原動力になっていたと分析されています。