宝塚花組『ポーの一族』の成功を語る上で欠かせないのが、奇跡と称されたキャスティングです。当時トップスターを務めていた明日海りおは、主人公エドガー・ポーツネルの孤独と冷徹さ、そして内に秘めた哀愁を完璧に体現しました。憂いを帯びた瞳の動きや少年特有のしなやかな身のこなしは、まさに生きたエドガーそのものであり、観客の度肝を抜きました。
そして、エドガーの運命の相棒となるアラン・トワイライトを演じた柚香光(後の花組トップスター)の存在が、作品のドラマ性を決定づけました。反抗的でありながら愛を渇望するアランの繊細な心の揺れを熱演し、明日海エドガーとの間に生まれた濃密な化学反応は、舞台上に息を呑むような美しさと緊迫感をもたらしました。
さらに、トップ娘役の仙名彩世が演じたシーラ・ポーツネル男爵夫人の気品あふれる妖艶さ、瀬戸かずや演じるフランク・ポーツネル男爵の包容力など、脇を固めるキャスト陣の卓越した芝居心が見事に噛み合い、ポーツネル一家の悲哀を際立たせる重層的な人間ドラマを完成させました。