偏微分の数式は一見すると威圧感がありますが、偏微分の計算手順と解き方における本質的な鉄則は驚くほどシンプルです。それは「着目している変数以外は、すべて単なる『数字(定数)』として機械的に扱う」という点に尽きます。
例えば、2変数関数 $f(x, y) = x^3 + 3x^2y + 2y^3$ という式を考えてみましょう。この式を $x$ について偏微分する場合、アルファベットの $y$ をあたかも「5」や「10」といった固定値としてみなします。したがって、$x^3$ は通常通り $3x^2$ となり、$3x^2y$ の部分は $y$ が定数係数となるため $(3y) \times 2x = 6xy$ となります。そして末尾の $2y^3$ には $x$ が一切含まれていないため、数字を微分したときと同様に完全に「0」となって消滅します。
結果として、$x$ による偏導関数は次のように求まります。
$$\frac{\partial f}{\partial x} = 3x^2 + 6xy$$
逆に、$y$ について偏微分する場合は、$x$ を単なる数字として扱います。$x^3$ は定数なので微分すると0、$3x^2y$ は $y$ で微分して $3x^2$、そして $2y^3$ は $6y^2$ と計算できるため、次のようになります。
$$\frac{\partial f}{\partial y} = 3x^2 + 6y^2$$
多変数関数の微分を解く上でマスターしておくべき偏微分の公式一覧の基礎は、高校数学の微積分公式の延長線上にあります。特に計算ミスが多発しやすい代表的な公式群を以下にまとめます。
- 積の偏微分公式: $\frac{\partial}{\partial x}[u(x, y)v(x, y)] = \frac{\partial u}{\partial x}v + u\frac{\partial v}{\partial x}$(他方の関数を固定しながら片方ずつ微分する)
- 合成関数の偏微分(チェインルール): 多変数が媒介変数 $t$ を介して結合している場合、$\frac{dz}{dt} = \frac{\partial z}{\partial x}\frac{dx}{dt} + \frac{\partial z}{\partial y}\frac{dy}{dt}$ と全経路の変動を足し合わせる
- 高階偏導関数(シュワルツの定理): 関数が十分に滑らか($C^2$級)であれば、微分する順序を入れ替えても値は一致する($\frac{\partial^2 f}{\partial x \partial y} = \frac{\partial^2 f}{\partial y \partial x}$)