1944年末、日本海軍が本土防空の切り札として編成したのが第三百四十三海軍航空隊(剣部隊)である。源田実大佐のもとに集められた精鋭の中に、飛行隊長として抜擢された菅野直の姿があった。彼らが駆ったのは最新鋭戦闘機「紫電改」。米軍の大型爆撃機B-29や護衛戦闘機を相手に、圧倒的な技量で互角以上の戦いを演じた部隊だ。
菅野は自らの紫電改に黄色のストライプを描かせ、敵に「我がここにあり」と誇示した。部下たちに対しては厳格な指揮官であると同時に、誰よりも命を大切にする兄貴分として接した。自隊のパイロットが命を落とせば人知れず涙を流し、戦果よりも全員の帰還を重んじた。恋愛に割く時間などないほど、彼の青春のすべてはこの部隊と戦友たちに注ぎ込まれていたのである。