五箇条の御誓文は、わずか五つの短い条文で構成されている。しかし、そこに込められた政治的意志は極めて重い。まずはその原文と現代語訳を照らし合わせ、文脈に潜む本質を確認したい。
一、廣ク會議ヲ興シ萬機公論ニ決スベシ
(広く会議を開き、すべての政治的課題は公の議論によって決定する)
一、上下心ヲ一ニシテ盛ニ經綸ヲ行フベシ
(身分の上下を問わず心を一つにして、国家の事業と秩序を力強く推進する)
一、官武一途庶民ニ至ル迄各其志ヲ遂ゲ人心ヲシテ倦マザラシメンコトヲ要ス
(公家・武士から一般の民衆に至るまで、誰もが志を遂げられるようにし、人々の向上心を失わせないことが肝要である)
一、舊來ノ陋習ヲ破リ天地ノ公道ニ基クベシ
(これまでの悪しき旧習を捨て去り、国際的かつ普遍的な道理に基づくべきである)
一、智識ヲ世界ニ求メ大ニ皇基ヲ振起スベシ
(知識を広く世界に求め、国家の基盤を大いに発展・興隆させる)
これらは一見すると、欧米型の近代民主主義をそのまま導入したかのように映るかもしれない。だが、当時の実態はより切実だった。諸藩の利害が激しく衝突する中、武力による独裁を警戒する諸侯を納得させ、国家の分裂を防ぐための「統合プロトコル」こそがこの誓文の真意だったのだ。