劇場アニメーションの歴史において、涙を描く表現技法を一変させた立役者の一人が新海誠監督だ。世界的な大ヒットを記録した『君の名は。』をはじめとする作品群では、キャラクターの感情の高ぶりと光の演出が完璧に同調している。
劇中の情感あふれるシーンにおいて、涙は単なる体液ではなく、夕日や黄昏時の光を反射する「レンズ」として機能する。背景の光を涙滴の中にプリズムのように閉じ込める美学は、現代のアニメーション制作やキャラクターデザインのトレンドに計り知れない影響を与えた。
この「光を含んだ涙」の手法は、現在のイラストシーンにおける標準仕様となった。夕暮れのオレンジや夜景のネオンブルーを涙のハイライトカラーとして差すことで、キャラクターが置かれた情景や切ない心情までを一瞬で描き切ることができる。