かつて医療現場では「耳鳴りは内耳の細胞が傷ついたことで発生し、根本的な治療法はない」と説明されるケースが一般的でした。しかし、『ためしてガッテン』の特集取材や日本聴覚医学会などの研究によって、耳鳴り発生の主戦場は「脳の聴覚野」であることが判明しました。
加齢や騒音などによって内耳の有毛細胞がダメージを受けると、特定の周波数の音が脳へ届きにくくなります。すると脳は「音の情報が足りない」と判断し、わずかな電気信号でもキャッチしようと脳の過剰反応を起こし、音の受信感度(ボリューム)を極限まで引き上げてしまいます。この増幅された脳内の電気的なノイズこそが、耳鳴りとして知覚される音の正体です。
番組内では「滝修行」の比喩でも解説されました。周囲が完全に静まり返った静寂の中では、わずかな水の滴る音でも大きく響きます。同様に、脳が音の飢餓状態に陥ることで、本来は処理する必要のない微弱な体内ノイズを過大評価してしまうのです。つまり、耳鳴りを軽減させるための決定的な鍵は、耳を塞ぐことではなく「脳に十分な音の刺激を与えて過剰な興奮を鎮めること」にあります。