坂本龍馬が率いた亀山社中のわずか2年間の航跡は、160年以上の時を経た現代のビジネスパーソンや組織人に対しても、極めて鋭い警鐘と教訓を投げかけています。
第一の教訓は、「大口パトロンへの過度な依存がもたらす脆さ」です。亀山社中は薩摩藩という巨大資本のバックアップがあったからこそ、華々しい武器調達という大事業を成し遂げました。しかし、それは裏を返せば、出資者の政治方針一つで組織の存亡が左右される「下請け・外郭機関」の域を出ていなかったことを意味します。自立したキャッシュフローを生み出せないスタートアップは、環境変化の波に容易に呑み込まれます。
第二の教訓は、「カリスマ不在時のガバナンス崩壊とコンプライアンスの欠如」です。近藤長次郎の切腹劇は、明確な就業規則や公平な評価制度を欠いたまま、精神論や「志」だけで結びついた集団の限界を如実に示しています。トップである龍馬のカリスマ性と個人の資質に頼り切った組織は、主要メンバーの逸脱行為を防げず、自浄作用を誤って貴重なコア人材を自ら抹殺してしまいました。
個人の熱量だけで時代を動かすことはできても、それを継続可能な社会システムとして定着させるには、冷徹な法制度と内部統制が不可欠である――。亀山社中から海援隊への激変は、激動の時代に挑んだ若者たちが命を削って遺した、痛烈な組織マネジメントの教科書なのです。