古屋兎丸に対する画力の評価は、同業のプロ漫画家や美術評論家の間でも極めて高く位置付けられています。単に「絵が上手い」というレベルにとどまらず、彼が操るペンタッチには明確な美術的意図と構築美が存在します。
特筆すべきは、少女や少年の肌の白さを際立たせる繊細な描線と、背景やメカニック、廃墟を描き込む際の硬質な点描・スクラッチの対比です。『ライチ☆光クラブ』における鋼鉄の機械・ライチと少年たちの柔らかな肉体の衝突、『アマネ†ギムナジウム』で見せる球体関節人形の冷たい陶器のような質感の描き分けは、触覚的なリアリティすら感じさせます。
また、彼の構図力は映画のカメラワークと舞台のセットデザインの双方から影響を受けています。見開きページでの大胆な俯瞰視点、アオリによる心理的威圧感の表現、さらにはコマ割り自体を窓枠やチェス盤に見立てる視覚的ギミックなど、ページをめくる体験そのものを視覚芸術へと昇華させています。