行政手続きの形式主義と労働現場の慣習のズレにより、毎年多くの受給者が深刻な経済的打撃を受けています。SNSや大手コミュニティ、社労士の相談現場に寄せられた当事者たちの生々しい告白を検証すると、制度を知らない善意や義理立てが最悪の結果を招いている実態が浮かび上がります。
都内のIT企業で進行役を務めていた30代女性の手記には、次のような後悔が綴られています。「適応障害で休職し、そのまま退職することになりました。退職日の夕方、お世話になったチームに菓子折りを渡しに行き、デスクの私物を箱に詰めていたところ、上司から『最後にこの引き継ぎファイルだけ場所を教えてくれ』と言われて30分ほど社内システムを操作しました。会社側が親切心でその日の打刻を『1時間勤務』として処理した結果、退職後の傷病手当金は全額不支給。総額240万円以上になるはずだった療養中の給付を失い、家賃すら払えなくなりました」。
また、精神科クリニックの待合室や当事者の集うコミュニティでは、「医師の証明書をめぐる空白期間」による受給停止の悲鳴も目立ちます。在職中は人事労務担当者が毎月の申請書類を管理・提出してくれていたものの、退職後はすべて自分一人で申請書を作成し、病院へ医師の意見書を依頼しなければなりません。退職の混乱から通院を1回スキップしてしまい、意見書の労務不能期間に「数日間の証明漏れ」が生じたことで、保険者から「一度治癒して労務可能になった」と機械的に処理され、以降の給付を全面的に打ち切られたケースが報告されています。
日本特有の「最後まで誠意を見せなければならない」という同調圧力や職場への罪悪感が、受給権の喪失という致命的な自爆行動へと直結しています。療養のための制度である以上、退職日においては「完全な療養専念」を徹底することが、自身を守る最大の防壁となります。