タイトルである『The Perks of Being a Wallflower』という英語表現は、作品の主題を解き明かす最大の鍵です。the perks of being a wallflower 意味を直訳すると「壁の花であることの特典(特権)」となります。「Wallflower(壁の花)」とは、ダンスパーティーなどで誰とも踊らず壁際に佇んでいる内向的な人間、スクールカーストの周縁に追いやられた目立たない存在を指すスラングです。そして「Perks」は、役得や思いがけないメリットを指します。
パトリックがチャーリーを仲間の輪に招き入れたパーティーで掲げたグラスとともに語るセリフは、本作屈指の名場面です。
「You see things. You keep quiet about them. And you understand. You're a wallflower.(お前はいろんな物事を見ている。それについて口を閉ざし、黙って理解している。お前は壁の花だ)」
派手に騒ぐ主役たちには見えない教室の片隅の悲哀、他者の些細な傷つき、言葉の裏にある孤独。輪の中心から外れているからこそ、世界の本質を冷静かつ温かく見守ることができる感受性こそが、スティーヴン・チョボスキー監督の定義する「壁の花の特権」でした。
また、本作を語る上で欠かせないのが、英語圏でも数多く引用されるウォールフラワー 名言 和訳の数々です。国語教師のアンダーソン先生がチャーリーに手渡した言葉は、登場人物全員の歪んだ人間関係を象徴しています。
「We accept the love we think we deserve.(人は、自分が値すると思う愛を受け入れてしまう)」
自分に自信が持てず、粗末に扱われる恋人に執着してしまうサム。秘密の関係に甘んじるパトリック。そして過去の汚濁から自分には幸せになる権利がないと思い込んでいたチャーリー。自己肯定感の低さが不当な扱いを甘受させてしまうという鋭い人間洞察は、観る者の胸を激しく揺さぶります。
そして物語を締めくくる夜のフォート・ピット・トンネルでの独白、「And in this moment, I swear we are infinite.(今、この瞬間、僕たちは無限だ)」。傷ついた過去の自分を消し去ることはできなくても、今ここにある友との連帯と夜風の中で、人間はいつでも生き直すことができるという祈りの言葉です。