強力な市販薬を手にした読者が最も陥りやすい誤解は、「最強の薬を飲んだのだから、風邪のウイルスそのものが消滅する」という思い込みです。大前提として、市販の風邪薬はあくまで症状を一時的に抑え込む対症療法に過ぎず、ウイルスそのものを死滅させる抗ウイルス薬ではありません。免疫細胞がウイルスを排除するまでの時間を稼ぎ、体力の消耗を防ぐための道具であることを忘れてはなりません。
さらに危険な盲点が、イブプロフェン最大量配合製剤を飲む際の「胃腸障害」と「重複服用」です。プロスタグランジンの生成を阻害するNSAIDsは、同時に胃粘膜を保護する成分の分泌も弱めてしまいます。そのため、空腹時に服用したり、風邪薬に加えて手持ちのロキソニンや頭痛薬を追加で併用したりすると、重篤な胃潰瘍や急性腎障害を引き起こすリスクがあります。
また、咳止めとして多用されるジヒドロコデインリン酸塩は高い鎮咳効果を誇る反面、腸の蠕動運動を低下させて極度の便秘を引き起こしたり、長期連用によって精神的な依存を形成したりする恐れがあります。「症状が治まっても予防のために飲み続ける」という行為は百害あって一利なしであり、添付文書に記載された用法・用量を厳格に守ることが鉄則です。