無脳症の告知を受けた際、ほぼすべての母親が「自分の何がいけなかったのか」と自分を責めます。SNSや質問投稿サイトでは、「妊娠初期にお酒を一口飲んでしまった」「風邪薬を飲んだ」「仕事で激しいストレスを感じていた」「葉酸サプリを飲み忘れた日があった」といった行為と疾患を結びつけ、耐え難い罪悪感に苛まれる投稿が後を絶ちません。
しかし、これは医学的に明白な誤解です。無脳症は、特定の行動一つで引き起こされるような単純なものではありません。葉酸サプリメントを規定通り完璧に摂取していたとしても、発症リスクをゼロにすることは不可能です。葉酸代謝に関わる酵素の遺伝子多型や、未だ解明されていない胎盤循環の初期不全など、不可抗力の要素が複雑に関与しています。
「予防法として葉酸が有効である」という医学的事実が強調されるあまり、皮肉にも「発症したのは葉酸を摂らなかった母親の怠慢だ」という歪んだ因果関係の言説がネット上で独り歩きしている実態があります。専門医が口を揃えて強調するのは、無脳症の発生は誰の責任でもなく、受精直後の偶発的な発生エラーによるものだという事実です。根拠のない迷信や自責の念に囚われる必要は毛頭ありません。