インターネット掲示板やSNSで長期にわたり語り継がれてきた都市伝説に、「冨樫義博はドラゴンクエスト(DQ)やMMORPGにハマって仕事をサボっている」という言説があります。
確かに同氏が無類のゲーム好きであり、過去の巻末コメント等でゲームの進行状況を楽しげに語っていたことは事実です。しかし、これが休載の直接原因であるという解釈は完全な誤認です。
実態としては、「激しい神経痛のため、作画机に向かって前傾姿勢で絵を描くことは不可能だが、横臥した状態でコントローラーを握ることなら辛うじて可能だった」という身体的制約の裏返しでした。過酷な痛みに耐えながら、神経を紛らわせるための手段としてゲームが存在していた側面を無視し、表層的な情報のみが一人歩きしてしまった典型例と言えます。
展覧会で公開された膨大なネーム、設定資料、そして「冨樫展」に並んだ圧倒的な密度の直筆原画の数々を見れば、同氏がどれほどの狂気的な情熱を作品に注ぎ込んできたかは明白です。