劇中序盤、雫が親友の原田夕子に見せる自作のパロディ詩「コンクリート・ロード」は、観客に強烈な印象を残すコミカルなシーンです。「コンクリート・ロード どこまでも 森を伐り 谷をうめ 西東京 多摩のわが街」という歌詞は、映画の舞台である東京都多摩市(聖蹟桜ヶ丘周辺)の開発風景をダイレクトに捉えています。
このパロディは単なる中学生のふざけ半分のお遊び描写にとどまりません。高度経済成長期から平成初期にかけて急速に進んだ多摩ニュータウンの宅地開発と、それに伴って失われた里山への批評が、宮崎駿監督のユーモアを交えて巧みに織り込まれています。
作中では天沢聖司に「あのさ、コンクリートロードはやめたほうがいいと思うよ」とからかわれ、雫が激怒するきっかけとなりますが、この「借り物の自然讃歌(カントリー)に対する、自分たちが生きる人工都市(コンクリート)への違和感」こそが、雫が本物の「カントリー・ロード」の訳詞へ向かうための重要な助走となっていたのです。