飛天御剣流を語る上で欠かせないのが、十三代当主である比古清十郎(ひこ せいじゅうろう)の存在です。作中におけるその強さは完全に別次元であり、原作者の和月氏自身も「作中の絶対的なジョーカー(最強キャラ)」と位置づけています。
普段は「新津覚之進」という名で陶芸家として静かに暮らしている比古清十郎ですが、一度刀を抜けば、十本刀最強の巨人・不二を一撃で圧倒する怪物ぶりを発揮します。比古清十郎がなぜここまで圧倒的に強いのか。その理由は、天性の剣術センスに加え、飛天御剣流の破壊力を完全に制御・吸収できる強靭無比な肉体(身長189cm、体重87kg)を備えている点に尽きます。
比古清十郎が常に身にまとっている白紅の外套(マント)には、約百斤(約60kg相当)ものスプリングと重りが仕込まれており、平時は自らの筋肉を封印して暴走を防ぐリミッターの役割を果たしています。この外套を脱いだ瞬間、比古清十郎の戦闘力は神の領域へと突入します。
奥義伝授の残酷な儀式|師匠を斬り殺さねば継承できない宿命
飛天御剣流の歴代継承者には、過酷な掟が存在します。それが「奥義伝授の儀式」です。
伝授の際、師匠は弟子の眼前で防禦不能の「九頭龍閃」を本気で放ちます。弟子が九頭龍閃を破るには、それを上回る速度の「天翔龍閃」を成功させる以外に生き残る道はありません。つまり、奥義を体得できた弟子は必然的に師匠の胸を切り裂き、師匠を絶命させることで初めて「比古清十郎」の名と外套を継承するのです。
この命懸けの儀式が課される真の理由は、「生きようとする意志(生への執着)」の獲得にあります。捨て身や自己犠牲の覚悟では、左足を踏み込む瞬間にわずかな迷いが生じて超神速に至りません。「絶対に死なない」「何としても生きて愛する者を守る」という究極のエゴイズムと生への渇望こそが、死の恐怖を乗り越えて天翔龍閃を完成させる唯一の鍵なのです。