掲示板を日常的に閲覧していると、あたかもネット上の批判的な空気こそがスタジアム全体の意志であるかのような錯覚に陥ることがある。だが、現場取材とスタジアムの現実に照らし合わせると、そこには明確な乖離が存在する。
第一に挙げられるのが「ネガティビティ・バイアス」の罠だ。満足しているファンはあえてネットに書き込まない傾向がある一方、強い不満を抱いた層は積極的に投稿を行う。その結果、掲示板上では批判的な言説が過剰に増幅され、実際のスタジアムにおける拍手や声援の温かさとは乖離した殺伐とした空間が形成される。
第二に、名古屋グランパスなんJまとめなどで拡散される移籍の噂や内紛疑惑の多くが、一部の切り取りや根拠のない憶測に基づいている点だ。選手個人のSNSの些細な動向や、練習場での断片的な目撃情報が、匿名掲示板のなかで「不仲の証拠」や「移籍決定の合図」へと尾ひれをつけて拡大していく。現場の関係者に取材を行うと、「まったく事実無根の話がネットで真実のように語られていて当惑する」という証言が少なくない。情報の真偽を見極められないまま拡散に加担することは、チームの士気にも悪影響を及ぼしかねない。