この不可解なフレーズが世に出た正確なルーツを辿ると、発信源は2010年代半ばから後半にかけての5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)や「なんJ(なんでも実況J)」などの匿名掲示板に突き当たります。当時、ネット上で爆発的に普及し始めていたスラング「草」を巧みに利用したスレッドタイトルとして投下されたのが始まりでした。
ネットユーザーの目を引いたのは、日本語の文法構造が持つ多義性です。「死んだ息子の名前が草」という文字列には、主に2つの解釈が成り立ちます。
- 解釈A(客観的事実):「亡くなった息子の名前が、文字通り『草(そう、くさ、かや)』という漢字一文字であった」
- 解釈B(スラング的読解):「死んだ息子の名前が(あまりに珍奇・奇抜で)草生える(笑ってしまう)」
掲示板のまとめサイトやSNSのタイムラインでタイトルだけを目にしたユーザーの多くは、後者の「死んだ息子の名前をネタにして笑っている極めて不謹慎な投稿」と受け取り、強い嫌悪感やショックを覚えました。しかし、実際にスレッドの本文を開くと「息子に『草のように強く逞しく育ってほしい』と願って名付けたが、早逝してしまった。その後のネットスラングの定着によって、息子の名前が笑いの意味で消費される世の中がつらい」という、親のやるせない嘆きが綴られていたのです。
この「最悪の第一印象」と「シリアスな中身」の落差による強烈な心理的ギャップが閲覧者の心を揺さぶり、瞬く間に5chまとめブログやTwitter(現X)へと転載され、インターネット全体に定着していきました。