名盤として名高いデビューアルバム『ドゥー・ワップス&フーリガンズ(Doo-Wops & Hooligans)』の収録曲として2011年にシングルカットされた『ザ・レイジー・ソング』。軽快なアコースティックギターの裏打ちと口笛が印象的なこの曲ですが、その誕生の背景にあったのは、リラックスとは対極のスタジオにおける重圧でした。
当時、ブルーノ・マーズは敏腕プロデュースチーム「ザ・スミージントンズ(The Smeezingtons)」のメンバーであるフィリップ・ローレンスや、客演参加したソングライターのケイナン(K'naan)とともに、連日連夜スタジオにカンヅメとなって楽曲制作に追われていました。グラミー賞受賞後の過密スケジュールとファーストアルバム完成へのプレッシャーから、全員のクリエイティビティは完全に枯渇。何時間もコードを鳴らしても一向にアイデアが浮かばない限界状態に達していました。
その沈黙を破ったのが、ソファーに倒れ込んだブルーノ自身が口にした「Today I don't feel like doing anything(今日はマジで何もしたくない)」というリアルな愚痴でした。スタジオにいた全員がその言葉に吹き出し、「それだ! その本音をそのまま歌にしよう」と即座に意見が一致。わずか数時間でメロディと骨組みを書き上げたというエピソードは、当時の米ビルボード誌や海外音楽メディアの取材でもブルーノ本人が赤裸々に語っています。
壮大でロマンティックなラヴソングである『Just the Way You Are』や痛切なバラード『Grenade』で頂点に立ったブルーノが、次に提示したのが「究極の怠惰」だったというギャップこそが、彼が稀代のポップ職人たる所以です。