1990年代、カルチャー誌や女性ファッション誌のトップモデルとして同世代の圧倒的な支持を集めていた彼女が、銀幕の世界へ本格的に足を踏み入れた瞬間は、今振り返っても鮮烈だった。その決定打となったのが、矢口史靖監督による映画『ひみつの花園』である。金銭への執着から奇想天外な騒動を巻き起こす主人公・鈴木咲子を、西田は全身全霊のコミカルな身体性と愛嬌で演じきり、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめとする各映画賞を総なめにした。
モデル出身という肩書を軽やかに脱ぎ捨て、泥臭い芝居も辞さない度胸を見せた彼女の元には、次々と気鋭の映画監督からのオファーが舞い込む。中江裕司監督の『ナビィの恋』では、都会での生活に疲れ、祖父母の暮らす沖縄の離島へと戻ってきた主人公・奈々子を好演。島の風土と島民たちの温かな空気感に溶け込むナチュラルな演技は、まさに日本映画史に残る瑞々しさを放っていた。
個性派俳優を多数擁し、作家性の高い作品作りで知られる芸能事務所・鈍牛倶楽部に所属したことも、彼女のキャリアを決定づけた要因の一つだろう。目先の流行に迎合せず、骨太な映画や独自の視点を持つ企画に果敢に挑むスタンスは、この時期に強固に確立された。