沖ノ鳥島護岸工事になぜ巨費を投じるのか?水没阻止とEez死守の真相

沖ノ鳥島護岸工事になぜ巨費を投じるのか?水没阻止とEez死守の真相

沖ノ鳥島護岸工事になぜ巨費を投じるのか?水没阻止とEez死守の真相について見逃せない 事実を分かりやすい構成で解説いたします。

沖ノ鳥島の本格的な侵食対策が始まったのは、1987年(昭和62年)のことだ。当時、環礁内にわずかに露出していた「東小島」と「北小島」は、長年の波浪浸食によって急速に風化が進み、満潮時には水面上数十センチを残すのみという危機的状況に瀕していた。放置すれば数年以内に波に削られて完全水没することは明白であり、当時の建設省(現・国土交通省)は国家の威信をかけた前代未聞の護岸工事に着手した。

工法は極めて綿密に設計された。まず、露出している2つの小島の周囲を取り囲むように、外径約50メートルに及ぶ巨大な半円形のコンクリート製擁壁を構築。その外側には数千個の消波ブロックを同心円状に配置し、外海からの激しい荒波を減衰させる構造を作り上げた。内側にはコンクリートを充填し、波の直撃から小島を隔離する防壁を完成させた。

しかし、最大の問題は防壁の内側に残された自然の岩肌そのものだった。直射日光、海水飛沫、台風時の猛烈な風雨にさらされ続ける露出岩は、内部からボロボロと崩落する危険を孕んでいた。コンクリートで完全に覆ってしまえば「人工島」と批判され、自然の島としての法的位置づけが揺らぎかねない。そこで採用されたのが、「チタン製防護ネット(チタンネット工法)」である。

チタンは海水に対する耐食性が極めて高く、数十年間にわたって錆びることがない。自然の露岩の形状を損なうことなく、強固なチタンの金網をドーム状に被せることで、岩の剥離を防ぎながら外気にさらす状態を維持することに成功した。現在も東小島と北小島の岩肌は、この精巧なチタンネットに守られる形で海面の上に踏みとどまり続けている。

木村 陽翔
著者

木村 陽翔

デジタルガジェットとスマート家電の検証記事を多数執筆。失敗しないモノ選びを提案します。