里芋の茎を口にした際、喉の奥を無数の針で刺されたような激しいイガイガ感に襲われたり、生の茎の皮をむいた後に手の平が耐え難いかゆみに見舞われたりすることがあります。これを「毒性があるのではないか」と不安視する人が多いですが、これは全身性の化学毒ではなく、「シュウ酸カルシウム」と呼ばれる結晶構造による物理的刺激が主因です。
サトイモ科植物の細胞内には、ラフィド(針状結晶束)と呼ばれる尖った微細結晶が密集しています。生の状態や加熱不足のまま咀嚼すると、このミクロの針が口腔粘膜や喉の粘膜に突き刺さり、強い炎症反応と痛み(イガイガ感)を引き起こします。同様に、茎を素手で触ると滲み出たシュウ酸カルシウムが皮膚表面を微細に刺激し、アレルギーに似たかゆみを誘発する構造です。
厚生労働省の統計資料や保健所の啓発情報でも、有毒植物である「クワズイモ」を食用の里芋やハスイモと誤認して摂取する食中毒事例が毎年報告されています。野山や庭先に自生している正体不明のサトイモ科植物は、アク抜き程度では中和できない高濃度のシュウ酸カルシウムを含有しているため、絶対に採取・喫食してはいけません。
調理中の皮膚トラブルを防ぐシュウ酸カルシウムの痒み対策としては「素手で扱わず調理用手袋を着用する」「酸(食酢やレモン汁)や塩を手につけてから作業する」ことが鉄則です。酸性の環境下では結晶構造が脆くなり、皮膚への物理的アタックが大幅に緩和されます。