インターネット上の古いキュレーション記事やまとめサイトを見て「東京駅に行けばベーグルの専門店が何軒も立ち並んでいる」と思い込んでいるなら、現場で確実に失望することになる。これが東京駅における最大の盲点だ。
かつてエキナカで圧倒的な知名度を誇ったベーグルアンドベーグル東京駅の店舗をはじめ、単一特化型の専門店はリニューアルやテナント入れ替えに伴い軒並み姿を消した。グルメサイト「食べログ」や各種地域メディアの登録データを精査しても、東京駅周辺でベーグルを主軸とする登録店舗数は極めて限定的、実質ゼロに近い表記となっているケースすらある。
なぜ巨大な東京駅で専門店が生き残れなかったのか。そこにはエキナカ商業施設の過酷な経済構造がある。駅構内の超一等立地では坪単価あたりの売り上げ効率が極限まで求められる。ベーグルは単価が比較的低く、製造工程に「茹で(ケトリング)」を要するため、狭小な厨房スペースでの大量焼成が難しい。加えて、スイーツや高級弁当のように手土産需要で数千円単位の客単価を稼ぐのが難しいというビジネス上の壁が存在した。
一方で、近隣のオフィス街である丸の内ベーグル専門店出店経緯を辿ると、路面店や周辺商業施設への出店・催事展開へとシフトしている実態が浮かび上がる。現在、駅利用者が手に入れられるベーグルは、専門店ではなく「厳選された一流ベーカリーが看板商品の脇で焼き上げるこだわりの数品」や「高級スーパーの仕入れ枠」であり、極めて限られた枠を競い合って購入する構図へと変貌を遂げている。