名門ローカル私鉄の名を冠しながら、なぜ北軽井沢屈指の巨大リゾートが閉鎖へと追い込まれたのか。取材を進めると、単なる観光需要の減少にとどまらない「運営会社の構造転換」と「ビジネスモデルの崩壊」が浮かび上がってきます。
紀州鉄道は、和歌山県御坊市に実在する鉄道路線(営業キロわずか2.7kmの紀州鉄道線)を保有する企業ですが、その実態は1970年代以降、不動産・リゾート開発を中核とする鶴見フロンティアグループ(旧・鶴見倉庫系列)の傘下で急速に拡大したリゾート企業でした。鉄道路線を保有することで得られる「鉄道会社」という抜群の社会的信用をテコに、全国で会員権を販売する独自の手法を展開したのです。
しかし、1990年代初頭のバブル崩壊以降、リゾート会員権の需要は急減。さらに以下の3つの構造的打撃が重なりました。
第一に、建築から30〜40年を経過した大規模施設の維持管理費・耐震改修費の高騰です。寒冷地である北軽井沢の冬期凍結対策や暖房維持費は莫大で、稼働率低下が直接的な赤字要因となりました。
第二に、宿泊旅行スタイルの根本的変化です。年間数万円の維持費を払い特定の提携リゾートに通う会員モデルから、インターネット即時予約で全国のホテル・民泊を自由に選ぶスタイルへと消費者の嗜好が劇的に移行しました。
第三に、運営親会社のグループ再編です。過大な債務と不採算リゾートを抱えた運営母体は、中核資産の売却や事業の整理統合を推進。その過程で、維持コストのかかる北軽井沢のホテル棟運営を継続することは経営判断として不可能と結論づけられました。