彼女の名が国際的な舞台で鮮烈に刻まれた瞬間といえば、映画『偶然と想像』を外すわけにはいかない。ベルリン国際映画祭で銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞した本作で、濱口竜介監督の緻密かつ有機的な演出と彼女の演技スタイルが見事な化学反応を起こした。
言葉のイントネーションや感情の起伏をあらかじめ決め込まず、相手の俳優から受け取る刺激によって毎テイク異なる表情を生み出す。この特異なアプローチにおいて、彼女の柔軟性と洞察力は遺憾なく発揮された。世界の批評家たちが「日本映画の新たな地平を拓く演技」と絶賛したのは、技巧を超えた生の人間性がそこに立ち現れていたからに他ならない。