本作を語る上で欠かせないのが、重厚な人間模様を演じ切った実力派キャストたちの圧倒的な演技力だ。静謐な狂気と切なさを漂わせ、視聴者を惹きつけた主演のいしだあゆみは、本作での名演によって女優としての評価を決定的なものにした。彼女の繊細な表情の変化や沈黙の間(ま)は、今見返しても息をのむ美しさと緊張感に満ちている。
一方で、人間の弱さや身勝手さをリアルに体現した小林薫の存在感も極めて大きかった。彼が演じた男性像は、当時の世相を映し出す鏡であり、不完全だからこそ愛おしい人間味に溢れていた。現在も映画や舞台の第一線で重鎮として異彩を放つ彼らの原点がここにある。当時共演したキャストたちのその後の活躍や現在の活動を振り返ると、本作がいかに卓越した才能を結集させた奇跡的な作品であったかが浮き彫りになる。