ジェリーの存在を読み解く上で欠かせないのが、USA妖怪の代表格である「トムニャン」との特異な関係性です。
トムニャンは生前、USAでジェリーの飼い猫「トム」として暮らしていました。トラックに轢かれそうになったところを助けられずに命を落とし妖怪化したという、ジバニャンに酷似した悲劇的な出自を持っています。しかし、妖怪となった後もジェリーとの関係は解消されず、再会したジェリーからは相変わらず雑かつ荒々しい愛情(?)を注がれることになります。
この二者のキャラクター造形における元ネタは、世界的な名作アニメーション『トムとジェリー』へのオマージュであることは明白です。古典的なカートゥーンでは「ネコのトムがネズミのジェリーに散々な目に遭わされる」のが定番ですが、本作ではその力関係をさらに極端化。人間であるジェリーが、妖怪となったネコのトムニャンを物理的・精神的に圧倒するという、パロディ構造のアイロニカルな反転が仕掛けられています。
トムニャンがジェリーの蛮行を恐れながらもどこか見捨てられない様子は、古典的なドタバタ喜劇の様式美を踏襲したものであり、脚本陣が意図的にアメリカン・スラップスティック・コメディのエッセンスを注入していたことが窺えます。