金のとりからが街頭から姿を消していったプロセスは、日本のフードビジネス史における構造転換と密接に結びついています。単なる一過性の流行終息にとどまらない、複合的な3つの要因が重なっていました。
第1の要因は、から揚げ専門店の過密化と大手外食チェーンの参入です。2010年代初頭の第1次ブーム以降、すかいらーくグループの「から好し」やアークランドサービスホールディングスの「からやま」など、大手資本が定食型・テイクアウト型の専門店を急速に全国展開しました。これにより、夕食のメインディッシュとして家族単位で購入する「おかず需要」の囲い込みが激化しました。
第2の要因は、原材料価格・エネルギーコストの急騰です。2026年以降に顕著となった輸入食用油や飼料価格の高騰、電気・ガス代の上昇は、薄利多売モデルをとるファストフード店を直撃しました。金のとりからが誇る「1カップ数百円」という手軽なプライシングは、原価率の上昇によって極めて厳しい採算分岐点に直面することとなりました。
第3の要因は、「食べ歩きスナック型」特有の立地制約です。かつて金のとりからが拠点を置いた渋谷センター街や新宿歌舞伎町といった一等地は、坪単価が極めて高い激戦区です。コロナ禍における人流制限を契機に食べ歩き需要が冷え込む一方、家賃負担は重くのしかかりました。現在、渋谷や新宿の跡地は、流行の変遷とともに別のテイクアウトスイーツ店やカプセルトイショップ、ドラッグストアなどへと変貌を遂げています。