近年、山岳救助関係者の間で強く懸念されているのが、スマートフォン登山アプリやGPSログの普及に伴う「安全の錯覚」です。
誤解1:SNSや登山記録サイトのGPSログをトレースすれば安全?
北鎌尾根のような切り立った岩稜帯では、谷側へのわずか数メートルの測位ズレが「安全な巻き道」ではなく「数百メートルの断崖絶壁」を指すことになります。さらに、ネット上に公開されているログのなかには、「ルートを間違えて滑落寸前で引き返した記録」や「極めて危険なバリエーションを強引に突破した記録」が無修正で含まれているケースも少なくありません。他人の軌跡を盲信して崖っぷちに誘い込まれる事故が急増しています。
誤解2:夏山シーズンならロープやクライミング用具は不要?
無雪期であっても、北鎌尾根は「一般的な三点支持」だけでクリアできるハイキングコースではありません。万が一のルートミス時に安全に懸垂下降(ラペル)して登り返すためのロープ、ハーネス、支点構築用ギアを持たずに尾根へ進入することは、「一度の判断ミス=即座に死」を意味する無謀行為に他なりません。