セミの抜け殻は、中国伝統医学(中医学)および日本の漢方処方において「蝉退(せんたい)」または「蝉殻(ぜんかく)」と呼ばれる格式ある生薬原料です。『神農本草経』などの古典医学書にも収載されており、現代医療においても医療用漢方エキス製剤の構成生薬として正式に認められています。
薬理学的な観点において、蝉退には以下のような効能が認められています。
- 解熱・抗炎症作用:風熱(かぜの初期症状)による発熱、喉の腫れや強い痛みを鎮める作用。
- 止痒・抗アレルギー作用:蕁麻疹(じんましん)や湿疹など、皮膚の激しいかゆみを抑える処方(「消風散(しょうふうさん)」など)に配合。
- 鎮痙・鎮静作用:小児の夜泣き、ひきつけ、痙攣の緩和。
- 視力障害・結膜炎の改善:目の充血や角膜の濁りをクリアにする目的での応用。
また、昆虫食の観点から抜け殻の成分を分析すると、主成分は動物性食物繊維である「キチン質」とアミノ酸結合タンパク質で構成されています。素揚げにして塩を振ることでサクサクとしたスナック感覚で食される地域もありますが、街中で拾った抜け殻をそのまま食すことは土壌細菌や寄生虫、残留農薬のリスクがあるため厳禁です。さらに、キチン質はエビ・カニなどの甲殻類と類似した構造を持つため、甲殻類アレルギー体質の方は強いアレルギー反応を引き起こす危険性があります。