スマートフォンの普及に伴い、人差し指と薬指の長さの比率(2D:4D比)を測るものや、特定のイラストの回転方向を見るテストなど、男性脳女性脳診断と呼ばれるエンタメ系コンテンツがSNS上で爆発的な人気を博してきました。胎児期に浴びたテストステロンの量と薬指の長さに関する学術論文自体は実在するものの、それを「個人の性格や共感力の有無」に直接結びつけるのは極めて短絡的です。
最大の落とし穴は、自己診断の結果を免罪符やレッテル貼りにしてしまう心理的トラップ(確証バイアス)にあります。「自分は男性脳だから、人の気持ちを察することができなくて当然だ」「彼女は女性脳だから、筋道立てた議論が通じないのは仕方がない」と諦めてしまう態度は、対話の放棄に他なりません。
東京大学のジェンダー研究者らも警鐘を鳴らしているように、社会的な性役割(ジェンダー・ロール)の期待によって、後天的に思考様式が強化されている現実を無視することはできません。「男の子は泣かずに論理的に話しなさい」「女の子はいつも笑顔で周囲に気配りしなさい」という幼少期からの無意識の教育規範が、結果として成人後のコミュニケーション様式に強固な癖を形作っているのです。診断結果はあくまで「自分や相手のコミュニケーションの現在地」を知る目安として受け止め、相手を固定的な箱に閉じ込めない柔軟性が求められます。