二人の関係性を語る上で欠かせないのが、原作第18巻第154話から第156話にかけて描かれた「花火の約束」のエピソードです。病弱だった恋雪は、幼少期から祭りの花火すら見に行くことができず、部屋の格子窓から遠くの空を見つめる日々を過ごしていました。そんな彼女に対し、狛治は看病の合間に外の様子や季節の移ろいを語り聞かせ、心の拠り所となっていたのです。
ある夏の日、町で打ち上げ花火が上がった際、狛治は起き上がれない恋雪を背負って外へと連れ出しました。夜空一面に広がる大輪の火花を見上げた恋雪は、生まれて初めて生の実感を味わい、人並みの幸せを実感します。そのとき狛治が口にした「来年も、再来年も、ずっと一緒に花火を見に行こう」という飾らない言葉は、明日をも知れぬ命だった恋雪の生きる希望となりました。
恋雪にとって狛治は、単なる看病役ではなく、閉ざされた世界から自分を連れ出してくれた唯一無二の英雄でした。だからこそ、彼女が祝言を承諾した際の「はい、よろしくお願いします」という返答には、深い信頼と生涯を共にする覚悟が込められていたのです。この花火の夜の記憶こそが、のちに鬼となった猗窩座の無意識の深層に刻まれ続けることになります。