「斤量1キロの差は、およそ1馬身(約0.2秒)の差を生む」
これは競馬界に古くから伝わる経験則であり、物理的な定説だ。時速60キロを超えるトップスピードで疾走する競走馬にとって、背中の1キロは最後の上り坂で脚色を鈍らせる決定的な重荷となる。距離が2000メートル、2400メートルと伸びるほど、その疲労蓄積は指数関数的に跳ね上がる。
2023年以降段階的に引き上げられてきた基本負担重量のルールは、2026年の現在、完全に競馬の現場へ定着した。騎手の健康管理と過度な減量防止を目的とした全体的なベースアップにより、牡馬の標準的な斤量は58キロが当たり前となった。これにより、大型馬と小柄な馬の間でパフォーマンスの差がより鮮明に表れるようになっている。
500キロを超える雄大な馬格を誇る馬が58キロを苦にせず力強くストライドを伸ばす一方、430キロ前後の小柄な馬は斤量増によるフォームの乱れを起こしやすい。1キロの増減がもたらす影響力は、現代競馬において過去最高レベルで高まっている。