ネット上の質問コミュニティやSNSでは、「落ちにくいウォータープルーフのアイライナーを毎日使っていたら、目尻の皮膚にインクが染み込んで取れなくなった」という切実な書き込みが散見されます。いわゆるアイライナーの色素沈着と呼ばれる現象ですが、これには重大な医学的誤解が含まれています。
日本の薬機法に基づいて製造・販売されている正規のアイライナーやマスカラに配合されている色素(酸化鉄や有機タール色素など)は分子量が大きく、生きた皮膚の表皮バリアをすり抜けて真皮に浸透・沈着することは構造上あり得ません。つまり、インクそのものが皮膚を刺青のように染め上げているわけではないのです。
では、なぜアイライナーを常用する人の目尻が黒ずんでいくのか。その正体は「落とすプロセスの物理的破壊」にあります。耐久性の高いフィルムタイプやジェルライナーを完全に除去しようとするあまり、指先やコットンに強い圧力をかけて目尻を引っ張るように擦り取る、あるいは綿棒で執拗に皮膚を削るように拭き取る行為が繰り返されています。結果として、メイクの顔料が残ったのではなく、除去時の摩擦によってメラノサイトが激しく刺激され、自前で作られたメラニンが沈着しているのが実態です。この因果関係を取り違えたまま「もっと強力なクレンジングで擦り落とそう」とエスカレートすることこそ、最も警戒すべき落とし穴と言えます。