特性方程式の原理を理解した後は、導出された解の性質に応じた三項間漸化式の解き方パターンを整理する必要があります。大学入試で問われる三項間漸化式は、特性方程式の判別式 $D$ によって大きく以下の2つの王道パターンと、そこから派生する応用型に分類されます。
パターン1:特性方程式が「異なる2つの実数解」をもつ場合($\alpha \neq \beta$)
特性方程式 $x^2 + px + q = 0$ が相異なる2解 $\alpha, \beta$ をもつ場合、$\alpha$ と $\beta$ は対称であるため、以下の2本の等比数列の式を同時に立てることができます。
① $a_{n+2} - \alpha a_{n+1} = \beta (a_{n+1} - \alpha a_n)$
② $a_{n+2} - \beta a_{n+1} = \alpha (a_{n+1} - \beta a_n)$
式①より、数列 $\{a_{n+1} - \alpha a_n\}$ は初項 $a_2 - \alpha a_1$、公比 $\beta$ の等比数列となるため、以下の関係が成り立ちます。
$a_{n+1} - \alpha a_n = (a_2 - \alpha a_1)\beta^{n-1} \quad \cdots \text{③}$
同様に、式②より以下の関係が成り立ちます。
$a_{n+1} - \beta a_n = (a_2 - \beta a_1)\alpha^{n-1} \quad \cdots \text{④}$
ここで多くの初学者が「③から番号を1つずらして階差数列を解く」という泥沼の計算に陥りがちですが、それは悪手です。③から④を辺々引き算することで、邪魔な $a_{n+1}$ が一瞬で消去され、一般項 $a_n$ が極めてエレガントに求まります。
$(\beta - \alpha) a_n = (a_2 - \alpha a_1)\beta^{n-1} - (a_2 - \beta a_1)\alpha^{n-1}
$\alpha \neq \beta$ であるため、両辺を $(\beta - \alpha)$ で割るだけで一般項が確定します。この「2式を作って差をとる」という対称性の利用こそが、最速かつ計算ミスを防ぐ定石です。
パターン2:特性方程式が「重解」をもつ場合($\alpha = \beta$)
受験生が最も失点しやすい落とし穴が、特性方程式が重解 $\alpha$ をもつケースです。この場合、変形できる式が1本しか作れません。
$a_{n+2} - \alpha a_{n+1} = \alpha (a_{n+1} - \alpha a_n)$
これにより、$a_{n+1} - \alpha a_n = (a_2 - \alpha a_1)\alpha^{n-1}$ までは求まりますが、もう1つの式が存在しないため引き算による消去が使えません。ここで採るべき決定打は、「両辺を $\alpha^{n+1}$ で割る」という変形です。
$\frac{a_{n+1}}{\alpha^{n+1}} - \frac{a_n}{\alpha^n} = \frac{a_2 - \alpha a_1}{\alpha^2}$
ここで $b_n = \frac{a_n}{\alpha^n}$ とおくと、式は $b_{n+1} - b_n = \text{定数}$ となり、数列 $\{b_n\}$ は見事な等差数列へと変貌します。公差を加えて $b_n$ を求めた後、最後に $\alpha^n$ を掛け戻すことで $a_n$ の一般項が求まります。
パターン3:フィボナッチ数列と無理数の一般項
三項間漸化式の象徴的な実例が、直前の2項を足し合わせていくフィボナッチ数列($a_1 = 1, a_2 = 1, a_{n+2} = a_{n+1} + a_n$)です。この特性方程式 $x^2 - x - 1 = 0$ を解くと、黄金比として名高い無理数解が得られます。
$\alpha = \frac{1 + \sqrt{5}}{2}, \quad \beta = \frac{1 - \sqrt{5}}{2}$
無理数であっても、上述したパターン1の解法手順は1ミリも変わりません。2本の式を立てて辺々を引き算することで、すべての項が整数であるフィボナッチ数列の一般項(ビネの公式)の中に、不思議なことに $\sqrt{5}$ が織り込まれた美しい数式が導かれます。