かがくいひろし急逝の真相と奇跡の絵本|50歳デビューの足跡

かがくいひろし急逝の真相と奇跡の絵本|50歳デビューの足跡

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かがくいひろし氏について語られる際、「50歳まで全くの素人だった人物が、ふとした思いつきで応募して一躍ベストセラー作家になった」という一種の“シンデレラストーリー”として紹介される場面が少なくありません。しかし、これは実態とは大きくかけ離れた誤解です。

実際には、20代の頃から人形劇の脚本執筆、舞台美術の制作、造形おもちゃの開発をライフワークとして継続していました。公募ガイドを片手に数多くのコンペや新人賞に長年挑戦し、幾度もの落選を経験しながら、アイデアを練り直し続けていたのです。

没後にアトリエから発見されたノートは、実に数十冊、数百ページに及びます。そこには、1コマごとのキャラクターの重心の傾き、視線誘導の矢印、読者がめくった瞬間に感じる0.1秒の視覚的ショックまでが、緻密なデッサンと注記によって設計されていました。

「思いつきの直感」で描かれた作品は一つとしてありません。28年間の現場で何百人もの子どもたちの微細な反応を観察し、検証と修正を繰り返した果てに到達した、極めて論理的かつ職人技的な計算の結晶こそが、かがくい絵本の正体です。

中村 さくら
著者

中村 さくら

エンタメ・カルチャー業界の深掘り取材を得意とし、現場のリアルな声をお伝えします。