五十嵐隼士が芸能界引退を発表したのは、2013年11月、27歳という俳優として脂が乗り切った時期でした。D-BOYSの結成初期からエース級の存在感を放ち、主演作や話題作を多数抱えていた最中の電撃引退であったため、当時は「体調不良説」や「人間関係のトラブル説」など根拠のない憶測が飛び交いました。
しかし、本人がファンイベントや後のインタビュー手記で語った真実は極めて現実的で前向きなものでした。10代後半から芸能界という特殊な環境で駆け抜けてきた中で、「表現者としての目標を一定やり切った」という達成感と同時に、「社会の仕組みやエンターテインメント以外の仕事で、自分の力だけで勝負してみたい」という強い渇望が芽生えていたと明かしています。
周囲の手厚いサポートに守られた芸能活動から自ら飛び出し、一人のビジネスパーソンとしてゼロから飲食店の立ち上げや接客、店舗運営の現場に身を投じる道を選んだ決断は、周囲の慰留を押し切って下された覚悟の選択でした。人気絶頂期に地位を潔く手放した姿勢は、昭和・平成の芸能界におけるセカンドキャリアのモデルケースとしても異彩を放っています。