婚約発表まで行った2人が破局を選んだ決定的な破局理由は、大きく分けて2つの要素がありました。
第一に、藤あや子の所属事務所や音楽関係者による極めて強い危機管理意識です。当時、大手音楽事務所の看板スターとしてNHK紅白歌合戦の常連でもあった藤あや子にとって、スキャンダルは致命傷になり得ました。木村一八は類稀な演技の才能を持ちながらも、過去の重大事件のイメージを完全に払拭できておらず、興行主やスポンサー企業からの反発は予想以上に激しいものでした。「結婚すれば築き上げてきた演歌歌手としての地位を失いかねない」という周囲の強い説得が、藤あや子の決断を揺るがせました。
第二に、そして最も本質的だったのが、藤あや子の「母としての覚悟」でした。一人娘を抱えて芸能界を生き抜いてきた藤にとって、娘は命に代えても守るべき存在でした。思春期から青年期へと差し掛かる多感な時期にあった娘の心理的負担や、周囲から好奇の目に晒されるリスクを考慮した際、木村との再婚に踏み切ることは娘の平穏を脅かす危険を孕んでいました。当時の取材メモによると、藤は「娘を傷つけるくらいなら、自分の恋を諦める」と周囲に漏らしていたとされ、母子の絆が最終的なストッパーとなったのです。