海外の旅行プラットフォームや個人ブログで「horaido tea stall」と検索すると、世界各国のバックパッカーや茶文化研究者による熱狂的なレビューが膨大に見つかります。その原動力となっていたのが、蓬莱堂茶舗 店主の真相とも言うべき、店主・安久氏の類まれなる接客哲学でした。
昭和から平成にかけて、海外旅行ガイドの世界的権威『ロンリープラネット』に掲載されたことを契機に、多くの外国人観光客が寺町を訪れました。店主は独学で磨き上げた流暢な英語を操り、単に茶葉を量り売りするだけでなく、急須の温度、湯冷ましの時間、さらには禅の精神性や「一期一会」の美学を何十分もかけて丁寧に解説したのです。
店内の小さな腰掛けに座り、店主が淹れてくれた一煎のお茶をすする時間は、訪日客にとって金銭では買えない「京都の精神的体験」そのものでした。大量販売や効率化とは対極にある、人間対人間の深い対話型営業。これこそが、国境を越えて愛された理由でした。