記憶に新しいところだが、主力である「敏感肌用シリーズ」が天然由来成分100%へと舵を切った際、愛用者の間には走った緊張感は小さくなかった。「前のシャバシャバした使い心地が変わったらどうするのか」「肌荒れ時の命綱だったのに、余計なものを足して荒れたら困る」。SNSにはそんな悲痛な叫びすら上がっていた。長年親しまれた処方を変えることは、メーカーにとって巨大なギャンブルに他ならない。
だが2年余りが経過した今、その賭けが無印良品の完全な勝利に終わったことは数字が物語っている。リニューアル当初の戸惑いはどこへやら、リピート率は以前を上回る推移を見せている。変えたのは時代に即した環境負荷の低減と植物エキスの最適化だけで、核となる「過剰に足さない、ただ潤す」という愚直な設計思想には一切手をつけていなかったからだ。消費者が恐れていたのは改悪であって進化ではなかった。その境界線を、無印の開発チームは恐ろしいほど冷徹に見極めていたのだ。