舞台裏の未公開エピソードとして語られるのが、出番直前の楽屋における二人の尋常ならざる静寂だ。極度の緊張が漂う中、渡辺隆はただ一言「いつも通りバカになってこい」と長谷川雅紀の背中を叩いたという。洗練されたロジック全盛の漫才シーンにおいて、愚直なまでにバカを演じ切るスタイルは一歩間違えれば大火傷を負う諸刃の剣だ。
2026年現在の視点から改めて分析すると、彼らの勝利は「巧みさの競技化」が進みすぎた漫才界への強烈なカウンターだったと言える。構成の美しさだけでなく、演者の生き様そのものが笑いへと昇華する瞬間。それこそが、お笑い賞レースの歴史において錦鯉が刻んだ最大の功績だった。