潮風が吹き抜ける海南島文昌市の龍楼鎮。かつて静かな漁村だったこの町は、今や巨大な観光都市へと変貌を遂げた。発射予定日の夜、海岸沿いのホテルや砂浜は数万人の観客で埋め尽くされる。
「カウントダウンがゼロになった瞬間、夜空が真昼のように明るくなり、遅れて胸を叩くような重低音が響いてくる。あの振動は一度体験したら忘れられない」。上海から訪れた30代のITエンジニアは興奮気味に語る。沿岸のレストランでは「ロケット発射鑑賞ディナーコース」が高値で取引され、地元経済に莫大な資金を流し込んでいる。
国家主導の厳格な宇宙開発と、押し寄せる過熱した商業観光。一見アンバランスなこのふたつの風景が同居する文昌の熱気は、宇宙開発が中国国民のナショナリズムと消費行動に深く結びついている現実を象徴している。