業界の景色を一変させた最大の引き金は、ベトナム保健省が強力に推し進める「国家医薬品データベース整備プロジェクト」の本格運用だ。国内で流通するあらゆる医薬品に固有の識別コードが付与され、製造元から卸、そして末端の薬局に至るまでが一本のデジタル鎖で結ばれた。
医師が発行した処方箋データは即座に国のシステムへ登録される。患者がカウンターで提示した処方箋が有効なものか、すでに他店で使用済みでないか、薬剤師の端末で一瞬にして照合される仕組みだ。裏ルートで仕入れた出所不明の薬剤や、偽造品の入り込む余地は物理的に削ぎ落とされた。
消費者にとっては、購入した薬のロット番号をスマートフォンのカメラで読み取るだけで、正規の流通経路を瞬時に確認できる安心感が生まれた。かつて東南アジアの医療現場を悩ませ続けた偽造薬問題は、デジタル監視網の前に沈静化しつつある。