スーパーの蒲焼きを食べた際、皮がまるでゴムのように噛み切れず、口の中にいつまでも残る現象には明確な科学的理由が存在します。鰻の皮下組織には豊富なコラーゲン線維が含まれており、適切な温度と水分量でじっくり熱が通ると、コラーゲンはゼラチン化してとろけるような柔らかさになります。しかし、電子レンジなどの急激な加熱によって皮の水分が一気に蒸発すると、タンパク質が熱変性を起こして硬縮し、硬いゴムのような弾力を持つ物質へと変質してしまうのです。
さらに見落とされがちなのが、工場出荷時に塗布されている市販のタレの存在です。大量生産される市販の蒲焼きには、陳列時の見栄えを保ち、照りととろみを長持ちさせるために、還元水飴や加工デンプン、増粘多糖類などが添加された粘度の高いタレがたっぷりと塗られています。これが冷蔵陳列される間に冷えて固まり、魚の表面で油分や酸化した脂質と混ざり合って膜を形成します。
このタレがついたまま再加熱を行うと、タレの中の糖分が鰻の身よりも先に焦げ付く一方で、身の内部には熱が届かず、結果としてパサつきや生臭さが身に閉じ込められてしまいます。「タレを洗い流すのはもったいない」と感じる消費者は少なくありませんが、この添加タレと表面の酸化油こそが、食感を損ない臭みを強調する元凶です。調理前に水道水やぬるま湯でタレを完全に洗い流し、キッチンペーパーでしっかりと水気を拭き取る下処理こそが、スーパーのうなぎを美味しくする方法の第一歩となります。