「中を水でしっかりすすいで乾かせば清潔」という認識は、微生物学の観点からは極めて危うい誤解です。ペットボトル再利用の危険性が指摘される最大の要因は、ボトルの物理的な形状と、口腔内細菌の急速な増殖スピードにあります。
口をつけて飲む際、唾液とともに口内の常在菌(ブドウ球菌やレンサ球菌など)や食べかすが確実に容器内へ逆流します。一度ボトル内に入り込んだ有機物は、雑菌にとって絶好の栄養源となります。一般的なマグボトルと異なり、ペットボトルは口径が約28ミリと極端に狭く、内部をスポンジで物理的にこすり洗いすることが不可能です。流水ですすぐ程度では、プラスチック内壁に付着した細菌の薄い膜である「バイオフィルム」を完全に除去できません。
衛生検査機関の検証データによれば、ペットボトル雑菌繁殖の理由は温度と水分、そして残留有機物のトリプルパンチにあります。口をつけた直後の飲料には数十〜数百個レベルだった菌が、常温(25〜30℃前後)に放置されると、わずか24時間後には数百〜数千万個以上にまで激増します。特に糖分やタンパク質を含む麦茶やカフェオレを継ぎ足した場合、増殖速度はさらに跳ね上がります。
熱湯消毒を試みる人もいますが、飲料用ペットボトルの主原料であるポリエチレンテレフタラート(PET樹脂)の耐熱温度は一般的に約50〜60℃前後(耐熱ボトルでも約85℃)に過ぎません。熱湯を注げば容器が熱収縮を起こして白濁・変形し、火傷や破損の直接的な原因になります。手軽さから選ばれがちなペットボトル水筒代わりのリスクは、下痢や腹痛といった急性消化器症状を招く健康被害と隣り合わせであることを認識しなければなりません。